2019年11月09日

暗い先頭


遅れて入ってきた列車の
先頭車両が真っ暗だった
一人一人に頭を下げる車掌
乗客は二両目に誘導される
すみません、すみません、上り坂を越えたら
普通のスピードで走れるはずです

南の海岸線から北の海岸線へ
深い緑の中を進む列車
確かに平坦になると
いつものように走り出した
駅に止まるたびに
駆け回る車掌
すみません、すみません、後ろの車両に
乗っていただけますか大丈夫ですから

進んでいる
少しいつもとは違うだけで 進んでいる

もしもこの箱が止まってしまって
もしも誰も助けてくれなかったら
海岸をとぼとぼと歩いて
家まで帰らなければならないだろう
雨が降ってきて
熊が現れたら
たどり着けないかもしれない
でもこの箱は動いている
真っ暗な一つ目を二つ目が押して
人々をきちんと運んでいる

終点まで無事たどり着いた
ありがとう ありがとうを
二つの車両と車掌に

🐱
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2019年07月30日

生首さん


私生首、あなたのそばにいないの
私今、沖縄にいるの
ずっと行きたかったけれど
時間がなかったし
あなたは興味がなかったし
でも一人にさせてくれないし
生首になったから、やっと来れたの

私生首、海にいるの
日焼けを気にしなくていいの
体重もずっと軽くなったの
一人はちょっと寂しいけれど
二人で寂しいよりはいいの

私生首、タバコを吸っているの
あなたに好かれるために
ずっとやめていたの
どこか温泉にも行きたいの
もうタトゥーもないから大丈夫
顎まで温泉につかりたいの

私生首、ナンパされたの
でもね、好みじゃなかった
あなたのことが好きだったの
好きだったけど嫌いになったの
わかってくれるかな
私生首、あなたのそばにいた日々を
抱え込むためにいるの
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2019年05月24日

一人で旅に出る


ぼくらは
おいしいソーダを飲むために生きていると思うんだ
いつだって
おいしいソーダは心を落ち着かせてくれる
だから
おいしいソーダを探していく必要がある

ぼくらは
おいしいソーダを飲めているだろうか?
今まで
おいしいソーダに出会えていたのだろうか
だって
まだまだおいしいソーダがある気がするから

君といるのは好きだ
でも
この部屋にはおいしいソーダがない
どこかにある
おいしいソーダを探しに行かないか
旅に出よう

知っている
君は旅に出たくない
君は部屋を出たくない
まどろみに身をゆだねて
硬い感情に触れたくなくて
ずっとここにいたいんだろう

でもぼくらは
おいしいソーダを飲むために生きていると思うんだ
僕一人で旅に出るよ
君のためにおいしいソーダを探してくるよ
そんな顔をしたって駄目だ
ふたりでずっとずっと生きていきたいから
そのためにしばらくはなればなれだ

ごめんよ
ぼくだって旅に出たいわけじゃないから
今日はそんなに遠くに行かない
そこそこおいしいソーダを
その辺で買ってくるよ
でもね
いつか最高においしいソーダを飲んで
馬鹿みたいに笑ってみたいんだ
君と
君とだよ
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2019年05月08日

TTR


SMLSLMMSSLM
MSMLSSMLMSL

人間を三種類に分ける仕事をしている
迅速に三種類に分けるのが仕事である
MSLSSL
人間は必ずどこかに分けられる
分けられた後どうなるのかは知りはしない
LMSSMM

LSMM
人通りの多いところは
SSLM
私を安心させる
LMLS
けれども仕事だから
MMSM
選ぶことはできない


人がいない
エ、あれは猫
暗い道
車も通らない
誰もいないと
心がカラカラと回る

ああ、あそこに人が
SS
L……LL? LLL?
ああ、トトロ
消えていく
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2019年01月15日

メイユ・インユ2


あの日君が見せた爪は
まるでバールのようだった
僕に振り下ろして
薔薇のような血しぶきを見るつもりの
ねえ、インユ

あの日君の瞳の中には
飢えかけの獣がいた
一度も食べたことのない
太陽の味を知りたがっている獣
ねえ、メイユ

ひらひらとしたワンピースが
消えかけのオーロラのようだった

冷たい午後の風は
終焉の相図だった

二人はいろいろあって
季節のようだったね

二人はいろいろな傷を
宝石にしていたね

まるで逆回転する時計のようだった
時計が壊れた洞窟の中だった
洞窟に漂う冷気のようだった
冷気は孤独を丁寧に切り裂く刃物だった

白鷺のよう
シジュウカラで
竹林のよう
防風林で
最後の三分間
間欠泉のような涙が
運命を悟ったかのような
灰色のじゅうたんを濡らした

地球がわずかに動く間に
心臓に穿たれたブラックホールが
語るべきアルバムの
リングを飲み込んでいった

ねえ、インユ
世界は誰もいなくなった島の工場のようだ

そうだね、メイユ
いま世界は何も洗うものがない洗濯槽なんだ

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2018年12月25日

部品


おじいさんは時計になった
もちろん知っている、あの歌を
動かなくなり
いつか忘れられる時計では
満足できないのだ
時計になって
最新のデジタル時計
電波時計になって
ずっと家族と共にいたい

時計になったおじいさんは
正確な時間を知らせ続ける
みんな意識していないだろうが
何回も時計を確認している
おじいさんはそれで生き続けられる
こちら側に在り続けられるのだ

そんなおじいさんのいる家に
ペットがやってきた
普通のペットではない
ロボットペットだ
「普通は飼えない動物」シリーズの
ロボットゴリラがやってきたのだ
ロボットゴリラは本物より小さいが
動きはゴリラそのもの
ロボットだから条約には引っかからないぞ

ロボットゴリラは人気者だ
みんなが家に見に来る
人が多ければ
時計も見られる回数が多くなる
おじいさんは嬉しかった
おじいさんは感謝した
時間に
人々に
ロボットゴリラに
そして
ロボットゴリラは時計をつかんで
投げた
ゴリラだから
投げた
時計は
壊れた

「せっかくだから、新しい時計を買いましょう。
ほら、電話もできて、ネットも見れて、
天気もわかって、話しかけてもくれる新しいやつを」

生きている人々の時間は
流れるという比喩を裏切らない
おじいさんの時間は
意味を失ってしまった
チク タク
三途の川の待合室で
今日も誰かが念仏のように唱えている
チク タク
タク タク

ロボットゴリラの様子がおかしい
関節がうまく動かなくて
倒れながらじたばたしている
カスタマーセンターに聞いたところ
もう修理ができないらしい
思いのほか売れなかったので
部品の製造が中止されてしまったのだ
ロボットゴリラはさらに壊れていく
ついにはほとんど動かなくなって
瞳を緑赤させるだけになった

家族はロボットゴリラを愛していた
だから
ずっと一緒にいられるように
ずっと忘れないように
ロボットゴリラを時計にした

何十年が過ぎても
時計は動いていたが

大きなロボットの古時計
今は もう 動かない

🐱
posted by rakuha at 21:15| Comment(0) | ★脳裏の表 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年12月24日

2018年12月14日

『見なかったことにしよう』販売

私家版詩集『見なかったことにしよう』500円が、架空ストアで買えるようになりました。コチラ

 作品
ラストグローブ
パンタグラフ中心の生活
楔生活

スーツ

携帯電話
カルデラリンク
呼び声捏造
宇宙十分の一
再生
綺麗な
近似
メイユ・インユ
刺身
信じるもの
Evergreen
セブンデイズバッファロー
深い光
朝の係
レタス アンド 豆苗


これまで個人誌に収録していなかった作品も含まれています。よろしくお願いいたします。
posted by rakuha at 13:26| Comment(0) | ★雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年11月07日

★信じる

水が流れる音
どれだろう
くるりらら
とろとろり
ほすほすほ
ずでだでん
わからない

耳を澄ましても
聞き取れない
あれは
空気がゆがむ音
あれは
牛が首をひねる音
様々な音がわかるのに
水の音は全く分からない

たくたくて
傷ついたときの音
のまらまら
泣き止んだ時の音
びずぼぜぞ
ぬか漬けに手を突っ込んだ時間の音
わかるのに
こんなにもわかるのに

きっとどこにも
水なんて流れていないんだ
耳を 感覚を 記憶を
信じる
心を閉じる

さらさらさ
あっ
つ ん ん

posted by rakuha at 19:47| Comment(0) | ★脳裏の表 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年08月21日

イキル

posted by rakuha at 21:37| Comment(0) | ★脳裏の表 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする