2014年12月22日

★あああ ああああ あああ いい


あ は一人で暮らしている
あ の日記にはこう書かれている
あああ ああ ああ ああ
あ しかいないので会話はない
ただ あ は星を見てつぶやく
ああ あーあ

昔は あ はみんなと暮らしていた
けれども あ は冷たくされていた
あ はひらがなの最初だし
口にしやすいし
何となく特別感があって
嫉妬の対象だった
誰よりもきつかったのは
い だった
彼は あ の次ということもあったけれど
なによりいろはの先頭だったのだ
彼は時代を恨み
あ を恨んだ
あ は不当に評価されすぎている
い はあを攻めた
実際にはこんな会話だった
いい いい いい? いいいいい
あ ああ ああ……
いいいい!
あ ああ ああ
いい いい いいー!
あ は頭を振ってうなだれた

あ はみんなのもとを去っていった
あ がいなくなったので
言葉には多くの隙間ができてしまった
みんなで埋め合わせようとしたが
い がみんなの前に立って言った
いいいい いいい いい いいいい
いろいろな意見が出たのだが
つまり
ろろろ ろろ ろろろろろろ
とか
ここここ こっこっこー
とか
むむむむむむむむむむっむー
とかとにかく
議論はあったものの結局
あ は い にすべてを託したのだという
い の嘘が認められてしまったのだった

すべての あ は い に置き換えられた
あした は いした に
アナウンス は イナウンス に
アカサカサカス は イカサカサカス に
あいあいがさ は いいいいがさ に
いきらかに変だったけれど
い の勢いがいまりにもすごかったので
いさから夜までせかいは い だらけ
もちろんい といいいれない者もいたけれど
追い出してしまったようないといじの悪さに
これ以上のいらそいは避けたかったのだ

皆はいつの間にか
あ のない世界に慣れていった
そしてどこに あ があったのかわからなくなった
皆が あ のことをとっくに忘れた頃
子どもが枯れ井戸の底から古い書物の切れ端を見つけた
そこには見たことのない あ の文字
「あめがあまい」
みなで悩んでいたところ え が叫んだ
う が あ にとってかわったに違いない
う は世の中に多すぎると思っていた
つまりこの文章は今
「うめはうまい」になっているが
元々は「あめがあまい」だったのだ

みな何となくそんな気がしてきたので
あ は面白い 私が あ になるというものもいて
う を あ に戻す作業に取り掛かった
うた は あた に
ういういしい は あいあいしい に
ウルトラソウル は アルトラソアル に
イナウンス は イナアンス に
どれが元々の う かわからないので
とりあえず置き換えていった結果
どんどん う は減ってしまって
う はなんだか居づらくなってしまった

ついには う も旅立ってしまって
世界から う はなくなってしまった
このようにあよきょくせつがいって
あ は いに
う は あになったのだが
長い年月を経て
人々の記憶はどんどんあすらいで
もはや誰もほんとあのことを覚えていない

あしなわれた音を
いなたはきっと
まだ知らないのです

猫
posted by rakuha at 12:04| Comment(0) | TrackBack(0) | ★単行本の3頁目 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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