2016年07月28日

★ジョン・ドゥ・ミー



姿なんていくら変えても駄目だ
私は名前を変えた
名前にまとわりついた過去を捨て
別人として生きた
けれども別人として
再び記憶されてしまう
私は何度も名前を変えなければならない

記憶の中でゆらゆらと揺れて
人の姿はかすんでいく
けれども名前に呼ばれて
再び輪郭は立ち現われる
そうだ
名前を捨てればいい
私のことを思い出せないように

名前のない私は
記憶に定位置を与えない
ふらふらと揺れて
溶けて消える
再会した時
「お会いしたことありましたっけ?
お名前はなんでしたっけ?」
と聞かれても
「誰でもないんですよ」
と答えればいい
曖昧な記憶がそれぞれの人の中で
変身に変身を重ねていく

しかしところで
私は誰なのだ
私は私を知っている
変わらない私を知っている
けれども名前のない私は
私を確認できなくなってしまった
私にとっては私は私だが
私以外にとっては私は私ではない
私という概念は私こそを示すわけではない
世界には私が溢れている
私は私たちの中に埋もれていく

私は私にしか通用しない
名前を私に与えた
この名前を守り抜かねばならない
変わらない私でいなければならないのだ


posted by rakuha at 21:35| Comment(0) | TrackBack(0) | ★単行本の3頁目 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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