2019年01月15日

メイユ・インユ2


あの日君が見せた爪は
まるでバールのようだった
僕に振り下ろして
薔薇のような血しぶきを見るつもりの
ねえ、インユ

あの日君の瞳の中には
飢えかけの獣がいた
一度も食べたことのない
太陽の味を知りたがっている獣
ねえ、メイユ

ひらひらとしたワンピースが
消えかけのオーロラのようだった

冷たい午後の風は
終焉の相図だった

二人はいろいろあって
季節のようだったね

二人はいろいろな傷を
宝石にしていたね

まるで逆回転する時計のようだった
時計が壊れた洞窟の中だった
洞窟に漂う冷気のようだった
冷気は孤独を丁寧に切り裂く刃物だった

白鷺のよう
シジュウカラで
竹林のよう
防風林で
最後の三分間
間欠泉のような涙が
運命を悟ったかのような
灰色のじゅうたんを濡らした

地球がわずかに動く間に
心臓に穿たれたブラックホールが
語るべきアルバムの
リングを飲み込んでいった

ねえ、インユ
世界は誰もいなくなった島の工場のようだ

そうだね、メイユ
いま世界は何も洗うものがない洗濯槽なんだ

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2018年12月25日

部品


おじいさんは時計になった
もちろん知っている、あの歌を
動かなくなり
いつか忘れられる時計では
満足できないのだ
時計になって
最新のデジタル時計
電波時計になって
ずっと家族と共にいたい

時計になったおじいさんは
正確な時間を知らせ続ける
みんな意識していないだろうが
何回も時計を確認している
おじいさんはそれで生き続けられる
こちら側に在り続けられるのだ

そんなおじいさんのいる家に
ペットがやってきた
普通のペットではない
ロボットペットだ
「普通は飼えない動物」シリーズの
ロボットゴリラがやってきたのだ
ロボットゴリラは本物より小さいが
動きはゴリラそのもの
ロボットだから条約には引っかからないぞ

ロボットゴリラは人気者だ
みんなが家に見に来る
人が多ければ
時計も見られる回数が多くなる
おじいさんは嬉しかった
おじいさんは感謝した
時間に
人々に
ロボットゴリラに
そして
ロボットゴリラは時計をつかんで
投げた
ゴリラだから
投げた
時計は
壊れた

「せっかくだから、新しい時計を買いましょう。
ほら、電話もできて、ネットも見れて、
天気もわかって、話しかけてもくれる新しいやつを」

生きている人々の時間は
流れるという比喩を裏切らない
おじいさんの時間は
意味を失ってしまった
チク タク
三途の川の待合室で
今日も誰かが念仏のように唱えている
チク タク
タク タク

ロボットゴリラの様子がおかしい
関節がうまく動かなくて
倒れながらじたばたしている
カスタマーセンターに聞いたところ
もう修理ができないらしい
思いのほか売れなかったので
部品の製造が中止されてしまったのだ
ロボットゴリラはさらに壊れていく
ついにはほとんど動かなくなって
瞳を緑赤させるだけになった

家族はロボットゴリラを愛していた
だから
ずっと一緒にいられるように
ずっと忘れないように
ロボットゴリラを時計にした

何十年が過ぎても
時計は動いていたが

大きなロボットの古時計
今は もう 動かない

🐱
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2018年12月11日

左から三

posted by rakuha at 21:19| Comment(0) | ★脳裏の表 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年11月07日

★信じる

水が流れる音
どれだろう
くるりらら
とろとろり
ほすほすほ
ずでだでん
わからない

耳を澄ましても
聞き取れない
あれは
空気がゆがむ音
あれは
牛が首をひねる音
様々な音がわかるのに
水の音は全く分からない

たくたくて
傷ついたときの音
のまらまら
泣き止んだ時の音
びずぼぜぞ
ぬか漬けに手を突っ込んだ時間の音
わかるのに
こんなにもわかるのに

きっとどこにも
水なんて流れていないんだ
耳を 感覚を 記憶を
信じる
心を閉じる

さらさらさ
あっ
つ ん ん

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2018年08月21日

イキル

posted by rakuha at 21:37| Comment(0) | ★脳裏の表 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年08月07日

深海の使者


舞いおりて飾りをなくす
拾われて意味をなくす
足掻いても理由をなくし
裁かれて存在なくす

水面から距離を置いて
古代からの系統の果てに
名もなき深海の部屋で
「さーがーすーなー」
つぶやき続けている
「さーがーすーなーあ」
時折向きを変えて
それは そこで そうして
永遠を食いつぶしている

ひっくり返してみると
案外快適な溶岩が
くるりと流れていて
本当は素敵

水中の水泡の数奇
巡りて停滞する
翼を広げた時に
更新が再開された
それでもつぶやき続ける
「あーあーあーあー」
光を洗い流しながら
「あーあーあーあー」
海底に縛り付けられていく
posted by rakuha at 00:04| Comment(0) | ★脳裏の表 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする